スーサイドアタック

佐藤は昨夜の谷山とのそんな話を思い出しながら、対極の可愛い久子のことを想った。

そうすることで操縦悍を握る手が震えずに済んだ。


乗機前に腰を抜かし、小便まで漏らしてしまう者さえいるが、そんな者を蔑んだり、嘲笑することは佐藤や他の隊員達には出来なかった。


それは、自分がそうならない自信が誰にもないからだ。


間もなく隊員83人は全員配置に着いたようだ。


順番に滑走路へ向かう83機の後方位置に佐藤、谷山、園田はいる。


いずれ戦艦へ接近しても、空の上での整然とした機の配列の仕方など隊員達は知らないのだ。


何故なら、戦艦に突撃する為の訓練しか受けていないからだ。



狙うは戦艦の土手っ腹。



艦橋やエレベーターなどの被害が大きな場所。



単純明快な自滅戦法だ。