「あの海の向こうが日本なのか? 」
涼が遠くの地平線を見て、しんみりと聞いた。

「ああ・・・・・・」
誠司も遠くを見る目で答えた。

しばらく二人は黙りこんだ。

波音が静かに響いて、海鳥がゆったり舞っている。

「なあ、兄さん。さっきの話なんだが、俺・・・・・・ニューヨークへ行こうと思っている」
誠司が真顔で言った。

誠司は、涼が自分を日本に連れて帰りたい話題を言い出す雰囲気を感じた。それを打ち払うように出た言葉だった。

「ニューヨーク!? 」
涼が、けげんな顔になる。