君を送る間に

「暗くなるのが、早くなったね。」と、言いながら君がブーツを履く。
「忘れ物ない?」と敢えて普通の調子で言った僕は、寂しさを紛らわしたのだろうか。
さっきまでの綺麗な夕空が、深い夜空に変わって。星達が僕らを優しく包んでいるような気になった。
口数が少し多いのは、僕だけじゃないはずさ。君のひく荷物カバンの音がやけに耳に響いて。
君がいなくなる、後少しの時間。何を話しておこうか。

君と笑い合ってたさっきまでが、夢の様に思えて。一人部屋に帰れば、君の飲み残したコップを見て、耐えれるか自信がない。
次の会う約束はたてられてないけど、とりあえず今日は笑顔で送ろう。駅までのこのわずかな道を少しでも時間をかけて。
また会えるのは分かってるけど、こんなに悲しいのは君がそれだけ好きだから。
改札を抜けた君は何度も振り返る。何だか滲んで見える。
今宵も僕は君のこと思いながら眠るでしょう。
また今度。