「………俺、奈未が妊娠したことすごく嬉しかった。人生奪われたなんて思ってない、お前は自分の病気のことと都羽のことだけ考えてればいい」


あとのことは全部、俺が何とかするから。
重い荷物なら持つから。
背負わせて、ごめんな。

強くなる必要なんて奈未にはなかったのにな。

俺が守るから。
奈未も都羽も、ずっとずっと守るから。


俺は、奈未と都羽を守るために生まれてきたんだ。


これが君との誓いなんだ。


「……悠君、全部背負わなくていいの。はんぶんこしよ?あたし、そういう奥さんになりたいんだよ?…ううん、なりたかった」


過去形…。
彼女の頬に涙がつたった。

一筋。
たった一筋。

今日は奈未より俺の方が泣いた。

赤い目をした惨めな俺。

彼女の瞳の奥で何かが強く輝いていた。



「あ、さっきね鈴佳が来てペアカップ置いてったんだよっ。悠君の部屋に1個置いとくよね?」


そう言って持ってきたピンクの紙袋からマグカップを片方取り出した。


そこには可愛らしいペンギンが描いてあって2個くっつけるとキスをするというよくあるカップだ。


鈴佳のやつめ…。


奈未の手からカップを受け取った。


「鈴佳ねー、最初ヤンキーの柄のカップにしようとしてたんだってー!昔の悠君じゃんね!」