■手紙

恭平が笑うなら名前なんて要らない。
カンナじゃなくてもいいと…
本気で思った。

『体…大丈夫…?』
『ん、平気… ちょっと痛かったけど…』

初めては大好きな恋人と。
そんなこだわりはもう捨てた。
恭平に必要とされるなら、どんな関係でもいい。

例え使い捨ての代用品だとしても…

『恭平…大好き…』

恭平の体温を肌で感じながら、そっと目を閉じ意識を手放した。






『…んー…』

次に目を覚ましたのは太陽が真上に昇る頃。
時計の針は11時を指していた。

隣に恭平の姿はなかった。

『恭平? 何処?』

自分の服は近くにない。
仕方なくベッドの足元に置いてあった恭平のパジャマを羽織り、ベッドを出る。

昼ご飯でも作っているのかと、キッチンへ行くが恭平の姿はなかった。

『恭平…ッ?!』

トイレ、バスルーム、寝室、リビング。
何処にも恭平の姿はない。
おまけに携帯も財布もない。

『ちょ…ッ 冗談だよね?!』

またいなくなったりしないよね?!
ずっと傍にいるんだよね?!

まだ足の付け根に違和感を感じる。
昨日、傍にいたという確かな証拠。

寝入るまでは傍にいたのに…

もしかしたらコンビニに行っただけかも。
そう思い、寝室に服を取りに戻る。

そして見つけてしまった。
彼からの手紙を…

手紙は私の携帯を重しにして、ガラステーブルに置いてあった。






おはよう
昨日はありがとう
本当に嬉しかった

でもこのまま何も無かったように過ごす事は出来ない
紗羅の事ちゃんとしたいから…
ちょっと行ってくる

すぐ戻れるのか
しばらく戻れないのか
まだわからないけど
戻った時にカンナの気が変わってなかったら
また…隣で笑ってください





『…恭平…ッ』

やっぱりどうしても…
私には恭平を止められなかった…