■最期の願い

【ここにはルールなんて無い】
【年齢も、性別も要らない】

懐かしい言葉を思い出した。
恭平のあの言葉…

ねぇ、恋は自由じゃないのかな。
ただ恭平を想うだけでも、迷惑なのかな。



天国も窮屈(キュウクツ)だよ…




「………本当にお願いしてもいいんですか…?」

瞼(マブタ)が重くて目が開けれない。
でも、意識はハッキリしてる。

この声はお母さん…

「ええ、気になさらずに行ってきてくださいな。」

これは…愛里…?

「バタン」と扉が閉まる音がして、辺りはシンと静まり返る。

しばらく沈黙が続いた後に、ハァと溜め息が聞こえた。

「調子良すぎるのよ貴方は! カンナを捨てたくせに…ッ」

それと同時に声を張り上げる愛里。

貴方…?
一体、誰に言ってるの?

「何か言ったらどうなの! こうなったのもマリアのせいなのよ?!」

…きょ……

『きょー……へー…?』

私の口から静かに音が漏れる。

「カンナ?! 聞こえるの?!」

肩を揺さぶられ、また音が出る。

『恭平……傍にいるの…?』

今度はハッキリと、伝わるように。

真っ赤な血がアスファルトを染め、鉄サビの匂いが鼻をつく。

頭が脈打つように痛く、意識は少しずつ薄れていった。

未練、疑問…
いろんな事を思う中で、どうしても叶えたい願いがあった。

『死ぬ前に…恭平に会いたい…… そう思ったの…』

意識が途切れるまで、そう願い続けたんだ…

「カンナ…ッ 大丈夫よ? ほら…マリアはいる。」

愛里の優しい声のおかげか、瞼に乗っていた重しが消える。
そっと開いた瞳に愛里と恭平の姿が映るが、すぐに涙で視界を奪われてしまった。

『恭平…ッ すごく…恐かった…ッ!』

恭平に会えないと思っただけで最大の恐怖を感じた…