■未来は

【さよなら】

ようやく出した答え。
それはHEAVENとの別れだった。

【HEAVENへようこそ】

もう二度と…聞く事もない…





夜が近付き、駅に向かう道が暗くなる。
ポツリポツリとある街灯だけを頼りに歩いた。

カツン…カツン…

途中、そんな音が背後から聞こえた。

この音、聞いた事がある。
スニーカーじゃない…
革靴の音…


恐る恐る振り返った私の視界に、1人の男性の姿が映った。

若くて、服装は少しだらし無い。
今時といえば今時の若者かも知れない。

そう思いながらまた前を向く。
その瞬間だった。

ガツン…ッ!!

鈍く不気味な音と共に、激痛が走ったのは…

頂頭部から流れ出た液体は額を通り、頬を流れる。

そっと手にとれば、一瞬で真っ赤に手が染まる。



何…?
何が起こったの…?







「いらっしゃいま……マリア!」
『…ただいま。』

恭平は小さく笑みを見せ、愛里の横を通り過ぎる。
それと同時、腕をグッと掴まれた。

姿形は女に見えても、腕に加えられる力は男と変わらない。

『…何?』
「カンナ… もう二度とここに来ないわよ。」
『……で?』
「もう…ッ 紗羅はいないの! 追い掛けても無駄なのよ?!」

大声で怒鳴り付ける愛里に恭平は冷ややかな目を見せる。

もう紗羅がいない事…
十分に解っているし、追い掛けるつもりもない。

でも、まだ終われない。
過去を清算するに、まだ足りない。

「貴方はまた泣くんだわ!! 今度はカンナを失って…ッ」

まだ、未来が見えない……