■過ち?

白い階段。
ベルの着いた扉には「Close」の看板。

店内は薄暗く、ピンクのルームランプがカウンターを照らす。

「お店が開いたら忙しいから… こうして先に夕飯食べちゃうの。」

愛里はそう言うとカウンターの中に入る。

しばらくして、覚えのある香辛料の香りがした。

『カレー?』
「当たり。 毎日カレーで嫌になっちゃうわ。」

手慣れたようにお皿に盛りつけていく愛里。

『たまには違うの食べたら?』
「そうはいかないの。 実はこれ、マリアからの賄いなのよ。」
『まか…ない?』
「そう、わざわざあの子が作ってるの。 今までは焼きそばとかオムライスも作ってくれたんだけどね…」

そう言うとカレーを盛ったお皿を私の前に置く。
カレーのいい香りが食欲をそそった。

「いつもなら私が来てからマリアが作ってたのよ… でも最近は顔も出さずにカレーだけ。」

少し寂しげに笑う愛里に、何となく自分を重ねてしまった。

変なの…
私達2人、恭平に振り回されてばっか。

2人共、フラれちゃったかなぁ…

『ねぇ、愛里? 何でフラれちゃったのかな…私…』

前日まで優しい恭平だった。
私の何がいけなかったんだろう…

「馬鹿ね… カンナは悪くないのよ。 あの子は本当に気まぐれだから…」
『…気まぐれ…』

気まぐれだから…
離れていってしまったのだろうか。

だったらその逆は?
その逆で、私に気が向く事はあるんだろうか。

「強いて言うなら… 貴方は好きになってはいけない人を好きになってしまった、それだけよ…」

そう言った愛里の目が悲しそうで…
それ以上は何も聞けなかった…