■限りある未来

「ほら、これが紗羅よ?」

愛里は携帯を開くと私にそっと差し出した。
待受画面には愛里と1人の女性…
仲よさ気に写っていた。

「私が男だってのも気にせずに接してくれた。 そんな人、彼女が初めて…」
『…』
「マリアが2人目、カンナが3人目ね…」

愛里はここに来るまで、どんな思いをしてきたんだろう。

皆に蔑まれ1人、嘆いてきたに違いない。
きっとそんな愛里を紗羅さんは笑顔で迎えたに違いない…

『…親友なんだ…』

馬鹿みたい。
私、少し妬いてる。

「カンナも親友よ?」
『…親友って何人もいるの?』
「そうね… もう紗羅は生きていないから…」

……え…?
生きて…いない?

『事故とか…?』
「少し違うけど… 事故みたいな物だわ…」

ふと見えた愛里の笑顔…
今にも泣き出しそうで、胸が苦しくなる。

「運命って皮肉ね… あの日あの時あの場所を通らなければ、私達はどうなっていたのかしら…」

あの日あの時あの場所。
少し間違うだけで運命が変わる。

人生に明日、明後日があるなんて保証はないんだ…

『…愛里… 大好きだからね…?』
「なぁに? いきなり…」
『言える時に言っとかなきゃって…』

急に恐くなったよ。
明日を待つのが…

私に明日はあるんだろうか。
明後日はあるんだろうか。

恭平と愛里と私…
いつまで一緒にいられるんだろう…