■天国?

『じゃあ、また明日…』

恭平との関係を始めてから、もう一週間が経とうとしていた。

帰りは必ず駅まで送ってくれるし、たまに朝も送ってくれる時がある。

格好よくて優しくて…
おまけに年上…
「恭平以上の人はいない」って、私の中で自慢になっていた。






「最近、角崎さんって変わったよねー!」

ある日の昼休み。
話した事もないクラスメートからそう言われてしまった。

『変わったって…』
「表情が柔らかくなったって言うのかなー… 親しみやすくなったよね!」

女の子達は口々に「ねー?」と言って私を見る。

気付かないうちに私の周りは人でいっぱいになっていた。
これだけ注目された事、ないものだから恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

「ってか噂なんだけど、角崎さんって年上の彼氏いるでしょ!」
「あ、知ってる! よく迎えに来る人だよね!」

恐い事に人の噂は止まる事を知らない。
どうやらクラスのほとんどが恭平の存在を知っていた。

少し気恥ずかしいんだけど…
こんなにクラスの子と話せたのは正直、嬉しかった。






『えー… 何か嫌だなぁ…』

放課後、迎えに来た恭平に教えると恭平は苦笑しながら言った。

『嫌だって?』
『どうせ「ロリコン」とか言われてんじゃないの?』

…言ってないし…
どちらかというと恭平の評価は高かった。

『…皆、カッコイイってさ。 恭平の事…』
『絶対嘘。』
『嘘じゃないよ?』

本当に嘘じゃない。
心配になってしまうほど、評判が良かったんだよ?

『あ… そういや週末、休みが取れたんだけど。』
『本当?!』
『うん、どっか行く?』
『うん!』

年の差はあっても私達は普通の恋人だった。
そう思ってた。

まさか私が踏み込んだ天国が天国じゃなかったなんて…
思いもしなかったんだ…