■未来への一歩
○side MARIA

【傍にいていい?】

今までにそう聞いた女はいくらかいた。
でも俺は返答を返せなかった。

紗羅を忘れられなかったし…
「次」を始める気もなかったから…

だけど…

【傍にいて】

「次」を始めるのも一興かも知れないと思えた。


皮肉にも紗羅に似た君と…


『じゃあ… お仕事頑張って!』

自宅近くにカンナを下ろし、俺達は解散する。

『また明日、遊びにいくね?』

カンナはまだ少し慣れないのか、照れたように笑った。

それがあまりに可愛くて、俺はカンナの唇にそっとキスをした。

『約束忘れないでね? 俺から離れないって…』
『う、うん…ッ』

傍にいて…
離れないで…
1人にしないで…

情けないだろう?
俺はいつも「孤独」に怯えてる。

お願い…
誰も俺より先に逝かないで…?







「マリア、遅いじゃないの!」

いつもより少し遅れてHEAVENに出た俺を待っていたのは、忙しいあまりに怒りを溜めた愛里だった。

『カンナを家まで送ってたらさ… そんなに忙しかった?』
「忙しいも何も… マリアに来客なのよ。 かなり前から待ってもらってるの。」

来客…?
俺は不思議に思いながらも愛里の視線の先を見る。

そこにはよくHEAVENに来てくれる女の人がいた。

「マリアッ 会いたかった!」

女の人は席を立ち上がると俺の腕にしがみつく。

彼女は藤原さんといって、俺とはお客以上の関係…だった。

でももう終わりにしなきゃ…

『藤原さん… 申し訳ないんですけど…』
「うん…?」
『ただのマスターとお客様に戻っていただけませんか?』

だって俺はもう1人じゃない。
傍には…カンナがいる…