■Heavenly

恭平と2人、手を繋いで道を歩いた。
あの公園を過ぎ、前に別れた池の前で一度立ち止まる。

『…ごめんね?』

突然出た謝罪に首を傾げると、恭平はクスクスと笑った。

『結婚してた事、事件の事… 色々と黙ってて…』
『あ…』

そうか。
そういえば何気なく隠されていたような…

『でも… ケジメつけたから。』
『ケジメ?』
『うん。 ネックレスも、証拠として警察に…』

恭平はそう言うと一度、言葉を止めて真っ直ぐに私を見た。

『紗羅の事、一生忘れる事ないんだと思う。 でも…生きてる人の方を大事にしたいから…』
『…それって…』
『うん、カンナだよ。』

…信じられない。
恭平の中は紗羅さんでいっぱい。
私なんかただの代用品だと思ってた。

私なんか置いて…
遠くに行ってしまったんだと思ってた。

『恭へ…ッ』

嬉しくて涙が溢れてくるよ。

頬を伝う涙を恭平は親指で拭い、笑顔を見せた。

大好きな笑顔が帰ってきた。
それが本当に嬉しくて堪らない。
そのせいで聞きたい事がいっぱいあるのに、全部聞けないでいる。


そんな私の手を引きながら、恭平はHEAVENへ向かった。

遠目に白い階段が見える。
入口の前には…

『…愛里…?』

久方ぶりに見る親友の姿。
格好は何故か、白いエプロン姿だった。

それに看板が…

『Heaven…ly…?』
「Heavenly(ヘヴンリー)。 新しいお店の名前よ?」

愛里はそう言って身につけていたエプロンを脱ぎ、私の首にかける。

白いレースをあしらった可愛らしいデザインのエプロン。

これは一体…

『「天国のような」って意味。 俺と愛里…それにカンナの店だよ。』

扉にはNewOpenの貼り紙。
開店は明日になってる。

『HEAVENも俺と一緒。 事件が解決して、生まれ変わるんだ。』

明日から、新しい毎日が始まる…