■ただいま

突然消えたHEAVENの看板。
いなくなった恭平と愛里。

その謎は解けないまま、時間だけが過ぎていった。

全てが夢だったんじゃ…
そう思い始めた時。
事件は起こった。

《逃げていた犯人が昨晩、逮捕されました。》

薄っぺらいテレビの中、布で姿を隠しながら車に乗せられる犯人の男。

名前は聞いた事ないが、顔はなんとなく見覚えがある。
それもそのはず。

《それにしても大胆不敵な犯人ですね。 被害者のお店の傍に潜んでいたなんて…》

犯人の潜んでいたのはHEAVENのすぐ近く。
毎日通っていたんだ。
見た事ないわけがない。

それより犯人が無事に捕まって、ホッとした。
これで恭平が手を汚す事はないんだ。

恭平も愛里も…
どっかで見てるかな…


気付けば時計は7時を指していた。
学校に行く時間だ。

私はリモコンでテレビを消し、家を出た。

駅に向かう道はいつもと変わらないのに、足取りが軽く感じる。
朝のテレビのせいかな。

電車に揺られ、学校の傍の駅へ…
改札をくぐった、その時。
見覚えのある人物が目に映った。

『…きょ…ッ』
『おはよ、カンナ。』
『恭平?!』

曇りなく笑うその顔を不思議に思いながら、駆け寄ると思い切り抱きしめられた。

『恭平…ッ 苦し…』
『ただいま。 元気だった?』

元気なわけない。
不安で不安で…
胸が張り裂けそうだったよ。

『行こっか! HEAVENで愛里が待ってる。』

言いたい事は沢山あった。
だけど、恭平が帰ってきてくれた。
それだけでもう、十分だよ…