■遺された者達

恭平からの手紙を読んだ後、私は脱ぎ捨てられた自分の服を手に取った。

探さなきゃ…
恭平を…

シャツに手を通し、スカートをはく。
最後に上着を羽織ろうとした時、上着のポケットから何かが落ちた。
よく見てみると、それは恭平がいつも持っていたマンションのカードキー。

唯一、部屋を開け閉めする事が出来る鍵だ。

『馬鹿…』

鍵なんか置いていったら、もう家に入れないじゃない。

それとも…
もう帰る気はないの?

置いていかれたカードキーを手にし、私は鞄と共に部屋を出た。

ロックされたか確認し、扉に背を向ける。

カードキーは愛里に渡しておこう。
いつ恭平が帰ってもいいように…


どうせ急いだって学校は遅刻だ。
もうサボってしまおう。

そう思い、進路をHEAVENへ移す。

途中、あの公園の前で足を止め両手を合わした。
恭平を止められなかった事を謝り、また歩を進める。


HEAVENはまだ準備中で、ほうきで階段を掃く愛里が見えた。

『…こんにちわ、愛里。』

私は挨拶と同時、ポケットからカードキーを出して愛里に見せた。

『恭平が来たら渡してくれない?』

すると愛里はカードキーを受け取り、不思議そうにこちらを見る。
その表情に涙が零れてしまった。

『恭平ね… どっか行っちゃった…』
「え…?」
『いつ戻るのか、わかんないって…ッ』

どうしてかな…
捨てるつもりなら、どうして抱いてくれたんだろう。
辛くて…涙が止まらないよ…