キィ…


ドアが開いた。


「の……のぞ、み」


「……泣いてる。黒板に書かれたこと、嫌だったから?」


違う。違うよ。


私はさっきのことを話そうかと思ったけど


やっぱりこわくなって言えないし、また涙が出てきた。


「別…に黒板のはっ、や…じゃない、よ」


泣いているから上手く話せない。


「じゃあなんで泣くの……?」


そういって望はあの図書室で抱きしめてくれたときよりも


強く、ギュッと抱きしめてくれた。


涙が溢れ出す。


「こわかっ、た…。こわかったよ…っ、」


「こわかったの?大丈夫だよ。俺がいるから」


望が優しい言葉をかけてくれる。


でもその時、あの女の言葉を思い出した。


《もし望と今以上の関係になったらあんたを徹底的に潰す。》


ドンッ



無意識に望を押し離してしまった。


とりあえず、謝らないと…


「望…あの…ごめ」


「いいよ。別に。」


最後まで言い切る前に望が言った。

「気分落ち着いたら授業出れば?」


それを言って望は屋上から姿を消した。



頭に浮かんだ言葉は一つ。


―――――嫌われた。