そのまま―――。


ゆっくりと―――。


ふたりの唇が重なって―――。



…って、あれ?


何も、起こらない…?


この流れはどう考えてもキス…だよね?


何も起こらないんですけど…?


えーっと…。


とりあえず、もう少し待ってみよう…かな…?


まだもう少し…ほんの少しだけ、期待してみてもいいよね…?


そしたら…。なぜかいきなり声が聞こえてきた。



「…く、美紅…」



この声…。


五十嵐クン?


名前を呼ばれているってことは…。


やっぱり、その…。


キ、キスじゃないってことなのかな?


うっすら目を開けると、目の前にはさっきと同じように、五十嵐クンが。


これまたさっきと同じように、



「美紅…」



と、甘美な声で、私の名前を呼んでいる。