屍都市Ⅱ

その頃、天坏を殴り倒して先行した榛原は、銃で立ちはだかるゾンビ達を蜂の巣にしながら施設内を走っていた。

幾つか武器保管庫から入手してきた銃。

その中のひとつ、M4カービンを乱射する。

「やっぱいいな、M4カービンは!流石在日米軍はいい銃使ってやがるぜ!」

笑みすら浮かべてトリガーを引く榛原。

その表情には、ゾンビとはいえ、かつて人間だった者を撃つ嫌悪感や罪悪感は感じられない。

命の重さや、それを奪う事に対する責任感などは皆無のようだった。

…榛原は元自衛隊員だった。

が、その入隊動機は極めて単純。

『銃を撃ってみたかったから』

国防、人命救助。

そういった思想は彼の頭の中には一切ない。

それを彼の上官も見抜いていたのだろう。

美原市大災禍の直後、彼は自衛隊をクビになった。

しかし榛原自身も、美原市大災禍以降に『ある理由』で自衛隊を除隊する気でいたのだが…。