屍都市Ⅱ

何かの拍子に、外国人が試験管を受け取り損ねたのだ。

手を滑らせたのか、それとも他の理由かはわからない。

とにかく試験管は外国人の手から零れ落ち、軽い音を立てて足元で割れる。

「ア!アァァアァァアアァアァァァ!」

たかが試験管が落ちて割れただけ。

なのにその外国人は大袈裟に声を上げた。

彼だけではない。

もう一人の外国人も、背の高い男も。

試験管を落とした外国人から遠ざかるように距離を置く。

大の大人三人が、何をそんなに大袈裟に恐れているんだろう。

…だが、それが恐れるに足る事態である事を、マリは目の当たりにする。

悶絶し、アスファルトに倒れてもがき苦しむ外国人。

一瞬垣間見えたその顔は。

「……!」

土気色に染まった肌、白濁した眼、剥がれ落ち始めた皮膚、そこから覗く筋肉繊維…。

テレビで見た、ホラー映画の怪物のような醜い顔だった。