その事は別段気にしていない。

だって、両親の顔なんて覚えていないのだから。

知らない両親の事を涙ながらに語られても、マリはピンと来ない。

だけど同じ小学校の同級生達が、親に叱られたとか誉められたとかいう話をしていると、羨ましく思う時もある。

マリには叱ってくれる父親も、誉めてくれる母親もいないのだ。

だから門限に遅れたマリを叱ってくれる牧師の事は、嫌いでもあり好きだった。

…街灯すらない路地を、駆け足で急ぐマリ。

その時だった。

普段人通りのない路地の陰に、数人の声が響いていたのに気づいたのは。