あの『美原市大災禍』からしばらくの時が経過していた。

クリスマスが近い。

一人の少女が『もろびとこぞりて』を歌いながら、街角を歩く。

クリスマスソングの印象が強いが、この曲は賛美歌の一つ。

少女…高田 マリ(たかた まり)が最も好きな歌の一つだ。

子供は皆、クリスマスを好む。

マリのように親のいない孤児であろうと金持ちであろうと、主は等しく幸せを運んでくれるのだと。

親代わりの牧師は、そうマリに説いて聞かせた。

だからマリは歌うのだ。

弾むように、踊るように街角を歩きながら。

主は、主は来ませり、と。