「あんたさえよければ、目的地にこのまま連れてってやるぜ?」

もう一度深幸にそれとなく目的地を訊こうとする颯太。

だが。

「残念でした」

何と彼女は、走行中のパトカーのドアを開ける!

そして。

「ナンパなら間に合ってるの。それに団体行動は性に合わないわ」

トンと軽く助手席の床を蹴る深幸。

彼女はスタントマンのように走行中のパトカーから飛び降りた!

「おい!」

急ブレーキをかけるものの、間に合わない。

颯太が振り向くと、既に深幸は立ち上がって細い路地へと入り込んだ後だった。

「何て女だよ、全く…」

確かにスピードは30キロ程度に抑えていたとはいえ、走行中の車から飛び降りるなんて…。

飄々とした態度、胆力、その身体能力。

颯太は深幸の万能ぶりに舌を巻いていた。