その時だった。
「…?」
検問付近の警官隊が慌しく動き始めた。
ジュラルミン製の盾を構える機動隊。
更には。
「!」
立て続けに数発の発砲!
発砲音を普段聞き慣れない深幸は勿論、事件現場を何度も取材してきた颯太でさえ、その光景には騒然となった。
…何故なら警官隊の発砲を受けても尚、『彼ら』は歩みを止めなかったのだから。
検問の向こう側…榑市市街地の方から、数十、数百の人影がゆっくりと進んでくる。
道幅いっぱいにまで広がったその群衆から、思わず口元を覆いたくなるような饐えた臭いが漂ってきた。
「…あぁ…」
深幸は失意の声を漏らす。
幼い頃からそうだった。
自分の思惑とは無関係に災難に巻き込まれる。
『深い幸せ』…深幸なんて、絶対名前負けだわ…。
己の名前を呪う彼女が目の当たりにしたのは、白濁した眼で全ての生者を凝視し、食らおうとする亡者の群れ…ゾンビの集団だった。
「…?」
検問付近の警官隊が慌しく動き始めた。
ジュラルミン製の盾を構える機動隊。
更には。
「!」
立て続けに数発の発砲!
発砲音を普段聞き慣れない深幸は勿論、事件現場を何度も取材してきた颯太でさえ、その光景には騒然となった。
…何故なら警官隊の発砲を受けても尚、『彼ら』は歩みを止めなかったのだから。
検問の向こう側…榑市市街地の方から、数十、数百の人影がゆっくりと進んでくる。
道幅いっぱいにまで広がったその群衆から、思わず口元を覆いたくなるような饐えた臭いが漂ってきた。
「…あぁ…」
深幸は失意の声を漏らす。
幼い頃からそうだった。
自分の思惑とは無関係に災難に巻き込まれる。
『深い幸せ』…深幸なんて、絶対名前負けだわ…。
己の名前を呪う彼女が目の当たりにしたのは、白濁した眼で全ての生者を凝視し、食らおうとする亡者の群れ…ゾンビの集団だった。


