やがて。

「ゴロウ」

ピュイッという口笛の音と共に名前を呼ばれ、そのシベリアンハスキーは颯太の体から退く。

「いってぇ…」

顔を顰めながら上体を起こした颯太。

彼の前に現れたのは。

「民間人の立ち入りは禁止されている。そこの看板が見えないか?」

迷彩服を纏った一人の自衛隊員だった。

背格好は颯太とほぼ同等。

しかし職業柄か、筋肉の引き締まり具合は颯太のそれを遥かに上回っているようだった。

「他の者は引き続き周囲の警戒を」

彼は背後に付き従っていた部下らしき隊員達に命令を下し、颯太を一瞥した。