現在美原市跡地は広範囲に亘ってフェンスや有刺鉄線によって封鎖され、自衛隊員によって厳重に警備されている。

一般人は勿論、マスコミでさえ許可なく取材や撮影はできない。

そんな事は承知の上で、颯太はこの地に足を踏み入れていた。

今となっては何の痕跡も残っていないが、もしかしたらあの辺りが理子から聞いた、妹の華鈴の最期の地となった臨海公園だろうか…。

遺体もなく、遺骨も残らなかった華鈴にとっては、この広い荒野こそが墓標。

颯太には、こうして跡地に訪れてやる事こそが華鈴への供養だと思えた。