彼の部下に対する指導は非常に厳しい事で隊の中でも有名だ。

ともすれば過剰とも言えるほどの訓練を部下に科す。

ある者はサディスティックな鬼島の性格の表れだと言い、ある者は日頃の鬱憤を部下にぶつけているだけだと罵る。

しかし部下達には伝わっていた。

部下を戦場や過酷な被災地で、一人残らず生還させる為。

誰一人として欠けさせない為に、鬼島は苛烈な訓練を部下に強いていたのだ。

だがその想いも、この地獄と化した榑市では実を結ばなかった。

自分一人がおめおめと生き残ってしまった。

その罪の意識に苛まれ、鬼島は今にも足を止めそうになる。

その足元で。

「!」

クゥン、と。

ゴロウが心配そうに声を上げた。