屍都市Ⅱ

電話を切り、颯太は悔しげに歯噛みする。

腐ってやがる…!

「金に目の眩んだ売国奴どもが…寄生虫をこの世に残しておく事の恐ろしさがわからないのか…!」

思わず声に出してしまうほどに、その怒りは頂点に達していた。

この蟲のせいで何十万人が死んだかわかっているのか?

どれだけの人間が非業の死を遂げたかわかっているのか?

華鈴が…どんな想いで死んでいったのか…!

上着の上から、内ポケットに入れた華鈴のノートを握り締める。

誰が見逃してやるものかよ。

寄生虫もろとも、この事件の黒幕全て根絶やしにしてやる!

アクリルケースの中に入れられた、寄生虫の入った試験管。

それを樹脂製の箱ごと手に取ろうとして。

「っ!」

突然の発砲音と跳弾の音に、颯太は身を低くした。