屍都市Ⅱ

ワクチンがあるとすればここか?

まるで船の水密扉のようなそのドアを開け、入室する颯太。

シンと静まり返った部屋の中。

その中央のアクリルケースの中に、小さな試験管の入った樹脂製の箱が置かれている。

「……」

ワクチンとすればこれなのだろう。

他にそれらしきものは置かれていなかったのだから。

しかし。

「………おい」

颯太は戦慄の表情で呟く。

「こりゃあ…何だ…!」

彼が見たもの。

それは小さな試験管に満たされた薬液の中で蠢く、一匹の微細な蟲だった。