屍都市Ⅱ

製薬会社の中も悲惨な状況だった。

職員は軒並みゾンビの餌食となったのだろう。

血に塗れた白衣が千切れ、廊下に落ちている。

薬品の生産ラインも停止している。

工場見学の為の大きな窓にこびりついているのは、無数の血の手形。

助けを求めた人間の手形なのか、或いは生者の肉を食らおうと殺到したゾンビの手形なのか。

どちらにせよ、あまり想像したくない事がこの場で起きていたに違いない。

…この惨状を写真にでも残して記事にすりゃあ、相当なスクープになるだろうにな。

もしかしたらピューリッツァー賞ものか?

職業柄だろうか。

ついそんな不謹慎な事も考えてしまう。

が、そんな事は後回し。

颯太の足は製薬会社の生産ラインよりも更に奥、研究棟へと進んでいった。