黒煙が立ち昇る。

炎が揺らめく。

その光景を背に、無数の人影がよろめくように歩を進める。

皆一様に致命傷。

最早手当てを施した所で手遅れなほどの深手を負った者達。

だが彼らは力強い足取りで歩み寄ってくる。

命を羨むように。

生を憎むかのように。

ちっぽけな蟲一匹によって、この街の人々は変わり果てた。

生きながらにして死んだゾンビという存在。

全ての命に等しく訪れる『死』という概念を捻じ曲げて、彼らはこの美原の街を滅びへと導いた。

それが後に『美原市大災禍』と呼ばれる事になる大惨事だった。