先輩は心配ないって言ってたけど…
気は抜けない。



それよりも先輩の方が心配だ。

しかし、先輩の事だ、大丈夫だろう。

そして、私はこれからゲームが始まったら殺人者になるのだ。



田崎さんももちろんそうなる。人殺しを任せっきりではいけない。

そんな事を思いながら、亜希は坂を下っていった。


街灯が女を照らす。時計は午後6時を指した。



殺人を犯すのに、抵抗はない…

このゲームに参加した事にも後悔はしていない。



『だが、起こした後に正気を保てるのか?』

『今まで通りの人間でいられるのか⁇』

そんな懸念がされる。


だが、ゲームの参加者になった今、そんな嘆きは最早意味がない。

左ポケットが震えている。私の携帯電話だ。
田崎さんからの電話だった。




「もしもし、雉元さんですね?約束通りの場所に来てもらえましたか?」

「はい…今、話であった辺りにきてます。」

「では、そこから真っ直ぐに進み、二つ目の交差点で左に曲がって下さい。

少し歩いたら、右手に7階だてのマンションがあるはずです。」



私は電話で導かれるままにマンションの前についた。

結構新しめの高級マンションって感じだ。