美波のことをすっかり忘れていた。
「ねぇ?美波から連絡入った??」慌てていたあたしに後ろから声が聞こえた。
「どした未来、最近は人の心配もできるようになったのか?」
ひやかしながら笑う声の正体は振り向かなくても分かる、店長だ。
「別に……」
「今、連絡きた所だよ。寝坊だってさ、誰かさんが起こしてくれなかったと……」
はっ??
そう思い、振り向いてみたが、店長は真剣な顔をしていた。
「そして、事件がもう一つ」
「なに??」
「未来のお気に召さない相手がご来店の模様……」
「はい?」
「まぁ、未来なら大丈夫だろう」
そう言いながら携帯を片手に店を出て行った。
「誰が来るの?」
近くにいた黒服に聞くと「shineの光さん」と小さな声で呟いた。
「はっ??なんであいつこの店来たことないよね?」
「いや、俺に言われても……」
頭をかいて下を向いている、若い黒服が一層頼りなく思えた。
どうりで、待機室の中が盛り上がっているわけだ。
他の女の子はあの“光くん”を知っているのだろう……
でもなんで……
うちの店で、あの男を見たことはない。
嫌な予感がする
「未来さん、ご指名なんで、もう少ししたらお願いします」
「えっ??」
「佐久間さんです」
「ああ!!うん、分かった」
一瞬、あのクソ男からの呼び出しかと思ったが、そんなことありえるわけがないと自分を鼻で笑った。



