メール3件、着信5件。


それを確認する暇もなく小走りしながら大通りでタクシーを止めようとしたが、空車がなかなかない。


「最悪だよ」


メモリーを呼び出し、タクシー会社へと電話をかけようとすると、目の前に高級車が一台とまった。


今は本当ナンパならごめんだ……

車に背を向け通話ボタンを押すと、相手が早く出ることを願った。


「……い、おいって……」


後ろから聞こえる声に、振り向きもせずにひたすらコールを聞いていると「未来」と確かに聞こえた気がして

ゆっくりと、背を向けていた車の方に目を向けた。



「店長っ!!!」

「つーかよ、シカトすんなよ…いきなり背向けるとは……」

「だって、ナンパかと……」

「俺の車知ってるだろ……」




タバコの煙を吐き出しながらそう言うと、ああ…昨日乗ったんだっけ。なんて思いだしているあたしがいる。


「お前、店遅刻すんぞ」


その言葉にあたしは店長に不気味な微笑み返した。


良かった……

大きな溜息を吐き出しながら、あたしはちゃっかり店長の助手席に乗っている。


「そう言えば、どうしてこの道通っていたの?」

「通っちゃいけない?」

「いや……」

「アハハハハッ!今ムカツクって思ったろ、分かりやすいやつだな」

そう大きな声で笑いながら「ちょっと用事があってね」と優しい口調で答えた。



「それより未来、今日はどうして髪をアップなんかにしてんの?初めて見たよ……」

「時間なくて……」


あたしだってこんな髪型はさけたい、顔がハッキリを見えるのは嫌い……


でも今日はしょうがなかったんだ。



「そっちのが可愛いな」

「えっ?」


普段褒めることはしない店長の言葉になぜか、顔が熱くなっていくのを感じ下を向いた。