その後、暫くして“光くん”はやっぱり人気なのか席を移ってしまい、いつの間にかあたしの横には一人の若い男の子、美波の横には“光くん”のヘルプがついていた。


あたしは、なぜがアイツの方へと自然と視線を向けていた。


美波に向けていたような笑顔で、横に密着している女と話している。


見るからにケバい隣の女は同業だろう……だなんて、
どうでもいい事を考えているくらい、あたしの隣についた男の子との会話はつまらないものだった。



「光さん、かっこいいですよね?」



その言葉に我にかえると、あたしの隣にいた男の子もあの男の方へ視線を向けていてそう呟いた。


「かっこいいだなんて言ったら失礼なくらいかもしれないですけど、本当に素敵な人なんですよ」

「はぁ、アイツが……」そう溜息交じりに言うと、隣にいる男の子は目を輝かせていた。


「俺は、光さんみたいな人間になりたいです」


そんなの止めた方がいいよ!!と、今にも喉から飛び出してしまいそうな言葉を無理やり呑みこみ、グラスに手を伸ばし残りのお酒を飲み干した。



確かに……
人間、誰しも表と裏の顔があるとあたしは思う。


だけど、同じ立場としてあの態度だけは許せない。自分の客じゃないからって、あんな接客の仕方……


思い出すだけで、また怒りがこみ上げてきそうで、「なんかないの?おもしろい話……」そう、隣にいる名前さえ覚えられなかった男の子に笑顔を向けた。