腹立つ……どう考えても許せない。


あの男がナンバー1?

ふざけてる……

鬼のような顔をした鏡に映る自分の姿を見ながらも、あたしの怒りはなかなか治まらない。


『変な名前……』


あのトーンの変わらない声

なぜ、こんな所に連れてこられてまであたしはイライラしなきゃいけないんだ。



いつもなら仕事が終わって今頃もう家に着いている頃だろう。


なぜ、あたしはこんな所で一人怒りを鏡に映る自分にぶつけているのだろう。

トイレに来たからって用を足したかった訳じゃない。


「帰ろう」


少し気を落ち着かせながら深く深呼吸したが、吐く息は怒りで震えていてため息に変わっていた。。


トイレを出ると、さっきの席に自然と目を向けた。


「なんだ、アイツの笑顔……」同一人物か?と疑うほどの笑顔を美波に向けている。


「最悪だ、あれで美波は騙されたのか……」


確かに、席に着く前に、一瞬だけあたしに向けられた笑顔に彼を侮辱したことを後悔したのは言うまでもない。


「あっ、未来さん……」


びっくりして立ち上がる美波の横で、“光くん”があたしにおしぼりを差し出した。


「いらない、帰るから」


その手を振り払うと、美波はあたしと“光くん”を交互に見ながら視線をおとした。