呼び出し音は確かに鳴る。
長く鳴らしたが、それでも秋山さんが出ることはなかった。
5枚の名刺を片手に、携帯電話を見つめる……
「突然、どうしちゃったんだろ」
『今まで、風邪だろうが、熱があったとしても、前日飲みに行って二日酔いだろうが仕事場に来なかったことはないんです』
『あれ?おかしいな、あたし秋山さんに会ったんだよな…』
『3週間くらい前かな病院で』
さっきの二人組の男の人の言葉と今日の美波の言葉が繰り返される……
あたしが秋山さんにここまでこだわってしまう理由はなんなのか、自分でもよく分からないが、どうしても探さなきゃいけない気がして、そして何か大切なことを抱えている気がする。
「あっ!!未来さん、早いですね」
更衣室に勢いよく入ってきて、相変わらず甲高い声で話しかけてくる美波。
慌てて手に持っていた5枚の名刺をポーチに入れると美波は不思議そうに覗き込んだ。
「何か隠しました?」
「いや、何も……」
「あ、そう言えば今日未来さんが着いていた新規のお客さんって……」
「えっ??」
「いきなり帰ったから何かもめたのかと思って」
「違うんだけどね」
そう言うと、美波は何か言いたそうな顔をしたが「そうなんですか」と言いながら、そそくさと着替えを始めた。
あたしも重い腰を上げ、ドレスを脱ぎながら美波から誘いが来ないことを強く願っていた。



