⁂ダイヤモンド⁂



確かにまめな人ではある。


あたしがこの店に入って初めて着いた席が秋山さんで、初めてのお客さんでそれからというものあたしの出勤に合わしてはほとんど顔を出してくれている。


いや、きっと週5ペースだろう。


来れない日は接待や仕事関係のことで詰まった時で、後は必ずと言っていいほど顔を出してくれたいた。

たとえそれが短時間だとしても。


どんな時でも笑顔を絶やさず、あたしの傍で美味しそうにお酒を飲んでいた。

それなのに……


「連絡は?」

「携帯はかかるのですが、何度鳴らしても出なくて」

「家は?知ってるの?」

「はい、それが……留守のようで」


「そう……」

「なんだか、嫌な予感がしたんです」


そう言いながら、スーツのポケットから財布を出し名刺らしきものを取り出すとあたしの目の前にそっとおいた。


「これ……」


5枚広げられた名刺を手に取ると、見覚えのあるそれにあたしの口は動かずに1枚ずつ丁寧に見つめていた。


「未来さんのですよね」

「……」


あたしは一年に一度、あの白いドレスを着るのと同時に名刺も作り直す。


それを知っていた秋山さんはその度びに「新しくなったんでしょ?ちょうだい♪」と少しだけ恥ずかしそうに呟く。


「メッセージ入りじゃないと貰わないから」なんてお酒を口元に運ぶ秋山さんを初めは煙ったがっていたが、年数を重ねていく頃には“なんて書こうかな?”なんて考えながらも書いたものだ。


「それを見て、秋山さんがこの店によく出入りしているのだと思って未来さんに会いに来てみたんです。」

「すいません……」


もはや、二人の声なんてもう、遠くの方で聞こえた気がした。