秋山さんは会社の社長だ。
どんな仕事をしていたのかは、振り返ってみると聞いた覚えも、話して貰った記憶もなかったが、社長だということだけは知っていた。
そして、あえてこの二人にそれを聞くこともないだろう。
「どうも……」
話の内容が気になり、余計な話はいらないから肝心な所だけまとめて話してくれ……そうも思ったが、そんなことも言えずに緊張した空気が流れ「お酒いただいても宜しいですか?」なんてどうでもいいことを口走り、気持ちを落ち着かせようとしていた。
「あの……」
「はい」
「秋山さん、よくここに来られるのですよね?」
少しまだ幼い顔をしている菊池さんは、あたしがグラスに氷を入れてる時に静かな声で呟いた。
一瞬だけ、手が止まりながらもあたしの頭の中はフル回転している。
なぜこの二人が秋山さんのことを聞きに?
もしかして、何かを調べに来ているのか……
だとしたら、プライベートの時間なのにで飲みにきていたことを話す必要があるのか?
突然現れた間の前の男二人よりも、やっぱりあたしの仕事している姿をずっと傍で見守り続けてきてくれた秋山さんの方が信用があり簡単に話す訳にはいかない。
焼酎が入り終わったグラスに少しだけお茶を注ぐと「なぜですか?」と冷静に笑顔で返している自分がいた。



