「これから店なんて……本当ムリっ!!ムリっー!!」


店に向かう途中で店長の前で平気な顔して口走ってる美波は素直な心の持ち主か、逆に本当に鈍感な女の子なのだろうと、思いながら足取りの重い美波を置いていくかのようにスタスタと歩き始めた。


「こうなったら、とことん丸一日フルに使ってやる~!!」


そんな声を聞いたと思えば、あたしを追い越し「お先に店入ります」なんて張り切って足早に人混みをすり抜けて行ってしまった。


「あいつはホントにっ……」歩きながらタバコをふかしている店長は、少し疲れたようにも見えたが、きっと店に入っ瞬間にまたいつもの顔つきに変わるのだろうと思った。



「未来、お前さ……」


何かを言いかけた店長と同時に、バッグの中から携帯の着信音が鳴り始め手に取ると画面には“美波”と載っている。


通話ボタンを押そうとした時、店長が何かを言いかけたことに思いだし「なに?」と聞いたが「いい、出ろよ」と電話に出ることを勧めたので迷わずに出た。


「店終わったら今日はあたしに付き合って下さい!!」

「はっ?なにが?」

「野球に付き合ってあげたんで、美波のお願い聞いて下さいね」

「はっ?野球って、あたしは……」



途中まで言いかけると電話はツーツーと機械音が流れ「あ~もう!!」と雑に携帯を閉じると横で店長が笑っていた。