「おお!未来、昨日はお疲れな!!」

店に入ろうとした時、後から店長に声をかけられ「はい」と頭を下げた。

「野球、誰か誘った?」

「ああ……」


そんなこと頭の片隅にも残っていなかったが、美波にチケットを渡したことを思い出して店長から目を反らした。


「あれ、あげました」

「は??」

「興味ないから……」



再び軽く頭を下げ、店に入ろうとすると「あたしが一緒に行くんです!!」と支度を終えた美波がまた甲高い声で店長に話しかけていた。


「そうなのかっ!!俺も一緒だから!!よろしくな!!」

「そうなんですか?じゃあ、楽しみにしています!!」


「んっ?----はい?」


後ろから聞こえた会話たちに、あたしの足が止まっていた。


なんであたしが……


後を振り返ると店長と美波の笑顔があたしの視界に入る。そしてそれは、間違いなくあたしに向けられているのだ。


「なら、お二人で…あたしは行かないです、興味ないので」


なぜが、妙に力が入ってしまった自分が恥ずかしくもなったが、二人はそんなあたしを見てニヤついていた。


「もう、決定だから」

「未来さんが誘ってくれたんじゃないですか」


店長の後に続き、便乗した美波をやっぱり好きじゃないと心から思った。


「はぁ、勝手にすれば?」


先に店に入ると、苛立ちの他に自分でも分からない感情が動いていることに深く目を閉じため息を吐いた。


きっと、彼女。
そう、美波のせいだ……。