「本当に笑わない」
「えっ……?」
酔っ払っているくせに、美波の鋭い視線があたしを突き刺す。
「未来さんって、生きてて楽しい?」
間違いなく、酔っぱらいのはずなのに、美波の目はあたしの心を読んでしまっているかのように、真剣な眼差しで見つめている。
そして、その美波の言葉があたしの頭の中で繰り返されていく……
気がついたら、目の前に新しいビールと注文した手羽先が置かれていて、美波はクスッと笑い始めた。
「な~んちって~!!そんなのあたしも分からないつーの♪」
『生きていて楽しい?』その言葉に一瞬、時間が止まってしまった。美波の目にあたしはそう映っていたのだろうか。
そんなことを考えながら、なぜだか美波に向かって微笑んでしまっていた。
上手く笑っていないことなんて自分でも良く分かっている。
それでも、なぜか美波に何かを悟られてしまうのが怖くて笑った。
その何かさえも自分でよく分かってないくせに……
「美波大丈夫なの?」
気を使ったかのような言葉が自然と出たのは、もうこの場が限界だからであろう。
「大丈夫じゃないですよ、もう恋愛は難しい……」
「恋愛?」
「そう、恋愛~!未来さんは恋してないの?」
まただ……
なぜかこの娘の言葉は、あたしの思考回路をストップさせる言葉ばかり、それでも自分を取り戻し「してないよ、興味ない」なんて無愛想に答えた。



