「はぁ……」


誰もいない更衣室のソファーに身を投げると、ポーチから携帯を出し開いた。


ーー着信11件ーー
ーー新着メール8件ーー


その画面を見ながら、小さくため息を吐きだすとまた携帯を閉じた。

きっと、店が終わってからのアフターの誘いだろう、いつもより着信の数が多いのは、きっと誕生日のせい……。


確認することさえも気が重くなったあたしは、そのままバッグに放り投げ、重たい体をおこし、着替え始めた。



メイクさんの手によって、綺麗に豪華にセットされていた髪をクシャっと崩しおろすと鏡の前で自分の映る姿を見つめた。



『未来の、その目だ……』

『お前はいい女だ、絶対に幸せになれるよ』

『またな、未来』



秋山さんが言い放った言葉たちが、あたしの脳裏に焼きつけられ、なかなか離れていかない。



あれから5年……

手に入れたもの。


未来という一人の女の人生と、何も役にたたないお金。



脱ぎ捨てた白いドレスをハンガーにかけ、クリーニングの札を付けロッカーにかけるとあたしは1人、更衣室を後にした。