「誰か誘っていけよ」

「……あたし野球なんてもの興味ないんですけど」

「うるせぇ」

「それに、誘う友達もいないんですけど」


そう言った瞬間、店長は不思議な笑みを残し立ち上がると「じゃあな！」と言って席を離れた。

店長のうしろ姿を見ながら、大きくため息を付き持っているチケットを眺めた。


「３月１７日？後、１か月ちょっとか……」


オープン戦とかかれているチケット。


そもそもオープン戦ってなんだ？？



暫く、そのチケットを見つめながらあたしはその場所に座ったまま、自分の為に届けられた店内に飾られている花たちを見渡した。


「綺麗……あたしにはもったいないな」


どの位、その場所に腰を下したままだったのだろう……
こんな風にガランとした店に一人だけで座っていたことなんて今までになかったかもしれない。


「未来さん大丈夫ですか？」


その言葉にハッとし、声のする方に顔を向けると心配そうな顔であたしを覗き込む黒服の姿があった。

「あっ！ごめん！！」


チケットを封筒にしまうと、立ち上がり更衣室へと向かった。


あれ……？


もう誰も残ってない。


自分の腕に付けられている時計を覗くと、もう朝方の４時半をさしていた。