そう、あの日、あたしは……
“未来”という自分から逃げないと誓った。
秋山さんの言葉で、あの日の出来事を鮮明に思い出していた。
「未来?どうかしたか?」
「え?あ、ううん、なんでもないよぉ~」
心配そうにあたしの顔をのぞきこむ秋山さんに、わざと明るく振るまった。
それでも、あたしから目を離さない秋山さんの視線に動揺して、目の前に置かれた高級そうなお酒をいっきに飲み干した。
「おう!いい飲みっぷりじゃねーか、負けられねぇ~なぁ」
秋山さんもグラスに入っていたお酒をすべて飲み干すと、満足そうに、あたしの目の前に空のグラスを置いた。
「おかわりよろしく!」
優しさがにじみ出た顔で見つめられ、あたしも自然と笑顔を向けていた。
さっきまで恐ろしく感じてた秋山さんは嘘だったかと思わせるような、そんな笑顔。
「未来、ちょっとトイレ行ってくるな!」
お酒を作ろうとグラスに手をかけたあたしは、秋山さんの後ろ姿を目で追った。



