――5年前――


「ねぇ、お嬢ちゃん。これ履きな」

「……」


見るからに高そうなスーツが似合う美形の男が、座りこんでいるあたしの前に座った。


17歳には、とても似合いそうにない


違う……


あたしには、とても似合いそうもない


12センチはあるであろう、高いヒールのパンプスが差し出された。


「いらない」

「履け!冷えるから」


いきなり怒鳴り始めた男を睨みながら、男の手から思いっきりパンプスを奪った。


足に被せると、似合うどころかサイズが大きくて、ぶかぶかだった。



「似合わねぇな……」


そう呟く男にあたしはパンプスを投げつけた。


「だから、いらねぇーって言ってんだろ!!」


そう言いながら立ち上がり、男を見降ろした。


何ひとつ表情を変えない男に、あたしは苛立ちを隠せずその場を逃げるように去った。