お客さんを接待しながら、大きな口を開けて笑っている店長、その姿を見つめていると、あたしの視線に気づいたのか不思議そうな顔していた。


その顔の変わりようにあたしは思わず笑いそうになったが、安藤さんの方に視線を戻した。


「勿体なくない、あたしはここにいるからこそ自分でいられるの」


それは、店長のおかげだろう


腐りきったあたしを拾い未来というあたしを作り上げてくれた店長のおかげ


この世界以外で生きていく術をあたしは知らないから……



「そうか、俺のところで働いてみないか?なんて言おうともしたが、未来は絶対に首を縦には振らないだろうな」


「よく分っているじゃん」


安藤さんは、有名な人だ……


この人に指名を貰えるように、周りの女の子たちは一生懸命自分を作りあげていた。


もちろん、お金をバンバン落としていく太客でもあるのだけど、みんなが求めていたものはそっちじゃないだろう。


昔この店にいた女の子は、安藤さんに目をつけられ今じゃテレビの中の世界にいる人……


しかも、売れっ子だ。
それが凄いのか凄くないのかは、あたしには分からないのだけど。


そんな、いつも指名をしない安藤さんが、あたしに指名をくれるようになったのは、あたしのある一言がきっかけだったという



それは未だに教えてはくれないのだが……


だけど、あたしはそんな世界などいらない。

「まぁ、未来は拒否するとは思っていたが」

そう言いながら、ウイスキーのロックを一気飲みすると「あ~っ!!」と顔を顰めた。


「もう、無茶な飲み方しないのっ!!」

「年寄り扱いか?」

「そうそう」

「お~キツイこと言うなぁ、さずが未来っ♪」


楽しそうにあたしの横で笑う安藤さんを見てあたしも自然と笑顔になる。



そして何処か歯がゆい……


あたしは自分でも気づいていた、だんだん変わっていっていることを。


きっと、人間らしく・・・・・・。