「未来さんって恋愛とかしてないの?」


「はっ??」

コホン、コホン!コホン!!


突然の質問に、あたしはタバコの煙を肺に入れたまま吐き出すことを忘れむせていた。


「なに〜そんなに動揺しなくたっていいよ」


また嘘くさい笑顔を見せながらグラスを口元に運びながらあたしを横目で見ている。


「そう言えば、あたしも未来さんとそういう話したことがないかも」


便乗するなよ……


この世界で、そんな話ネタに食いつかないで欲しい。



二人の視線が、あたしの方にはっきり送られているのがよく分かる。


「ああ、好きにならないから人を」


「ああ」


横で深く相槌を打って納得したクソ男にビックリしてあたしは顔を覗き込んだ。


「えっ~!!未来さんって、ずっと彼氏とかいないんですか?」


あのね、今なんの時間だと思ってんだよ。

そして、あたし達の仕事にそんな会話は御法度だろ!!

そうも思ったが、別に相手はクソ男だし、現に彼氏がいるわけでもない。


「いないね、好きな人もいないし、好きにもならないし」


もう何も聞かれたくないと、そう話すと美波は「恋した方がいいですよ」と笑顔でそう言った。


この美波の笑顔の元は、隣にいる男かと思うとなぜだか腹が立ってきていた。


「失礼します、申し訳ございませんが未来さんをお借りします」


いつもよりも低姿勢な黒服にまでも腹が立ったが、呼びに来てくれたからいいやと思い「ごちそうさまでした」と“光くん”のグラスに自分のグラスを重ねると腰を上げた。


「また来るから」


そう真剣な顔をしながら鋭い視線を送ってきたのは、背を向けられていた美波は気づいてはないだろう。


「今日行けたら、未来さんとお店行くよ~♪」


「はっ??」


甘い声でそう言っている美波を強く睨みながらその場を離れた。