自分には自分がないんじゃないか。
 
 そう思ったのが発端でした。



自「自分って一体なんなんだろ。なにがしたいんだろ」

?「フフフ、そう思うなら自分探しの旅に出たらいい」

 自分ではない誰かが言った。
自「……誰?」

?「ワタシはお前の中のお前ではない何かだ」

自「……何かってなに」
 そこは正体明かせよ。

?「何かって言ったら何かだ」

自「…………」
 答える気がないのか。
 腹の立つ。

?「それはまぁさておき、とりあえずお前、自分探しの旅に出たらどうだ?」
自「自分探し……って言っても、自分、いまココにいるし」

?「…………。そんなボケをかますのか貴様」

自「すいません、半分本気です」

?「そこは半分冗談だと言うところだ」

自「ナイスツッコミ☆」

?「貴様、ふざけているだろう」

 あ、お怒りモード。
自「いやー、だって自分探しの旅なんて、言葉の響きからして恥ずかしいじゃないですか」

?「なにを言うか、恥など乗り越えてしまえ」

自「そんな簡単に言わないで下さいよ」

?「貴様、そんなことを言っているから自分を見つけられないんじゃないか?」

 う。
 言われてみればそうかも?

?「まぁ、なんだ、言葉の響きなど気にするな。要は己がやりたいこととか、自発的に動きたくなるくらいの『何か』を見つければいいんだから」

自「それもそうですね。…………でもどうやって自分を探せばいいのか分かんないや」

?「うーん、とりあえず手当たり次第『何か』をやってみるのはどうだ? 仕事だろうと趣味だろうとジャンルとかカテゴリは関係なく、気になったものに手をつけてみるとか」

自「本当に手当たり次第ッスね」

?「うん」

自「……まぁ、やってみますよ」

?「おう。まずは動かないと始まらないからな」



 こうして自分探しの旅に出ることになりました。