―公認―


「お父さん! お父さん!」


「父さん! オレだよ、洋介だよ! 目、覚ましてくれよ……」


 そんな声が病室から廊下まで、聞こえてきた。


「オレ、恋人がいるんだ。真亜耶って言うんだ。良い娘だよ。子供ができたんだ。孫だよ! オレ働くよ。父さんの製鉄所で!」


 ドアが閉められてしまった後のことは、私にはわからない。


 一人、ぽつんと、病室の外で待つ他なかった。


 二人が出てきたとき、よっちゃんが言う前に彼のお母様がいらっしゃって、私の手を取り、涙を見せられた。


「あなたが真李耶さん……?」


 その表情は疲れ切ってはいらしたけれど、何とも言えず、柔らかだった。


「洋介、お父さんがあんな風になってから、おまえはなんでも自分一人で抱え込むようになってしまった。だけど……なんて愛らしいお嬢さん。洋介あなた、不幸なばかりじゃ、なかったのね……」


「そうだけど、オレはいっぺんも不幸だなんて思ったことはないよ」


「そうね、あなたはそういう子だったわね……」


 いうと、よっちゃんのお母様はうっとつまり、ぎゅっと私の手を握って、何度も頷いてはため息した。


「ありがとう、あなた。真李耶さん。洋介をよろしくね」


「おかあ……さま」


 私は自然にゆるむ涙腺を、堪えきれず泣いてしまった。