―ホワイト・ジルコン―


「無理だよ。先に裏切ったのは、よっちゃんなんだから。ミーナは馬鹿よ。全部話すのよ。あったこと、話したこと全部!」


 私の心は剣を握る。


 重くておもくて、とても持ち上げられない、罪を赦すための剣を。


「これ……覚えてる?」


 私は雪の結晶をかたどったプチペンダントを懐から出した。


 大事に、傷一つもつけないように、ベルベットの小袋に入れて、大事に持ってた。


 校則に触れないように、お守りみたいにして。


 よっちゃんが、誕生日にくれたから。


 ダイヤモンドが誕生石の私のために選んでくれたという、ホワイト・ジルコニアのついたペンダントの、トップがひときわ大粒で、気に入っていた。


 なのに。


 陽気に笑いながら、いつもよりずっと機嫌よく昼食の席に着いたあの娘のポケットから、取り出したハンカチと一緒に落っこちたそれは……


 私のとおんなじペンダントだった。


 ううん。


 私のより、揺れるジルコニアが一つ分、多かった。


 デザイン違いのそれは、形は違えど、同じ『オンナ』に贈るための、『オンナ』を搾取するための餌、だったんだ。


「十日あげる。そうしたら、まっすぐ、あなたの心で、応えてくれる……?」


「十日後で良いんだな」


 むしろ、憐れむような目でよっちゃんは言った。


 それがつらそうにも見えて、私の心を慰めた。


 馬鹿だった。



 古ぼけた電池の切れかけた吊るしランタンの光が、大きく揺らいで、不安定に二人の影の合間を行ったり来たりしていた。