―幸せで、ごめーん!―


 ミニミニガイドさんのよっちゃんがとってくれたロッジで、私たちは一切の灯りを消し、万一のためにランタンの形をした電灯をもって表へ出た。


「山小屋ってこうなんだね。すごく素敵。空気も違う」


 よっちゃんが満足そうに頷いて、


「やっぱ、そういうとこ良いよな。わかってるよ、真李耶ってさ」


 階段の下でかごんで、膝を抱えて居たら、よっちゃんが近づいてきて、真っ白い息吹出して、言ってくれたの。


「おーい! 世の中の男共ー! オレが一番、真李耶を好きだー!」


 山間にエコーしちゃったのには参ったけど。


 すぐ近くの山荘から、笑い声と共に、


「うるせー!」


 と返ってきたのが笑えた。


 思えばこのときが一番幸せだったのかも知れない。


 やばいよ、もう。


「妬いてる、やいてる」


 こそっと言うと、よっちゃんはイシシ、と笑う。


「すみませーん、オレら幸せで、ごめーん!」


 と、いたずらっぽい声で言うと、そっと私の上にすがるように、でも軽く抱きしめてくれた。


「ねえねえ、怒られて、すみませんってことは、その程度なの?」


 違うよって言うみたいに、よっちゃんはぎゅぎゅって力をこめた。


「痛いし、苦しいよ」


 彼はすぐに腕を解いて、解放してくれる。


 隣に座って、同じものを観てくれる。


 ああ、ズキンズキンと胸が痛むよ。


 ―私は、このとき、全ての覚悟を、彼に捧げようと決めた。